言葉にできなかった想い
2017.12.30
こんにちは、成田です。
年末年始って本当に晴れの日が多い気がしますね。今日もとても穏やかな良い日です。
一年いろいろあったけど、毎年、この穏やかな冬晴れですべてが相殺される気がします。
数日前のこと。
最後の病院外来の日、特にその朝は早くから飛び入り予約があったりして、ばたばたしておりました。
「行ってきます!」と勢いよく洗面所から出るドアを開けたら、「ブチっっ!!」と音がして、お気に入りのブラウスのロールアップスリーブを止めるボタンがはじけ飛びました。ロールアップの紐にドアの取っ手がいい具合に引っかかったのですねえ。
そして、ボタンちゃんは一気に姿を消しました。
うちの、20年来使ってて、最近ついに寿命が終わったテレビ(ブラウン管、厚さ約80㎝)の台の下に転がり込んだらしく、ちょっとやそっとでは取れなさそう。
その日はロールアップをおろして事なきを得ましたが、どうにもやはりボタンが欲しい!
が、テレビ台は重くて動かせず、テレビを買い替える日はまだ先になりそう。
そこで、運よく時間もできて余裕のある本日、何年も取り出してなかった私の裁縫箱をよいしょっと棚からおろしてきました。
大学生の時から愛用している裁縫グッズがたんまり入った衣装ケースなんですが、最近は全く時間がなくて使うこともなくなってました。
「きっとボタンの1個や2個はみつかる」と確信して開けてみたら。
こんなにたくさん、いろんなお洋服を買ったときについてくるボタンたちがいました。
これ、私の母がやっていたことを真似しているのです。小さいころ、母の裁縫箱の中に、小さな紙箱が入っていて、その中にはたくさんの色とりどりのボタンがぎっしり入っていました。とってもうらやましくて、母がいない時にこっそりこんな風に並べて遊んでいたものでした。
懐かしいのと嬉しいのとでしばらく一つずつ眺めていたら、その中にこんなボタンが!
これ!
間違いなく母の裁縫箱に入っていたものです。私大好きだったもの。覚えています。
現に、裏をみるとすでに糸を通すでっぱりは風化して壊れています。一体何十年前のものなんだろう。
なぜ私の裁縫箱に入っているかと言うと、母の裁縫箱からこっそり盗ってきたからです。
私の母はとてもとても厳しかったので、たとえボタン一つであっても「これちょうだい」などと、甘えて言うことはできない家庭でした。
このボタンは、母の明るい色のワンピースについていたボタンです。
その服を着て、白いイヤリングをつけた母にあこがれていました。
「お母さん、大好き」って言いたかった。でも言わせてもらえなかった。
そして言えなくて、母の留守にこのボタンを盗んだ私がいたのでしょう。
私はそれからずっと大きくなって、今ここにいます。
言葉にできなかった想い、それが今ここまでつながって私がここにいるのだ、と思います。
今の私は大人ですから、「人には、言葉にできない想いも大切なんだよ」と、としたり顔で言うことができます。
想いをすぐに未熟なまま伝えてしまう通信手段の恐ろしさを、世に説いたりします。
だけどその一方で、もし私が幼少期から、想いを自由に伝えてもよいことと、伝えたら認められるということを学べていたら、確実に人生が変わった、とも思います。
時折顔を出すそういう弱い私を、周りの人たちが全力で支えてくれているから、今の私はなんとかやっていけています。
本当にありがたいことだと思っています。
だから、大きくなった私は、めでたくロールアップスリーブのボタンを直し、母のボタンを再び裁縫箱にしまい込み、封印しました。
次に開けるのはいつのことになるでしょう。
「お母さん、大好き」という想いを伝える代わりにボタンを盗む私のような子どもを一人でも減らせるよう、来年も周りのみんなに支えられつつ、成田は力の限り会員の皆様に寄り添っていきたいと思っています。
今年もアクシスにいらしていただき、本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
成田 奈緒子
年末年始って本当に晴れの日が多い気がしますね。今日もとても穏やかな良い日です。
一年いろいろあったけど、毎年、この穏やかな冬晴れですべてが相殺される気がします。
数日前のこと。
最後の病院外来の日、特にその朝は早くから飛び入り予約があったりして、ばたばたしておりました。
「行ってきます!」と勢いよく洗面所から出るドアを開けたら、「ブチっっ!!」と音がして、お気に入りのブラウスのロールアップスリーブを止めるボタンがはじけ飛びました。ロールアップの紐にドアの取っ手がいい具合に引っかかったのですねえ。
そして、ボタンちゃんは一気に姿を消しました。
うちの、20年来使ってて、最近ついに寿命が終わったテレビ(ブラウン管、厚さ約80㎝)の台の下に転がり込んだらしく、ちょっとやそっとでは取れなさそう。
その日はロールアップをおろして事なきを得ましたが、どうにもやはりボタンが欲しい!
が、テレビ台は重くて動かせず、テレビを買い替える日はまだ先になりそう。
そこで、運よく時間もできて余裕のある本日、何年も取り出してなかった私の裁縫箱をよいしょっと棚からおろしてきました。
大学生の時から愛用している裁縫グッズがたんまり入った衣装ケースなんですが、最近は全く時間がなくて使うこともなくなってました。
「きっとボタンの1個や2個はみつかる」と確信して開けてみたら。
こんなにたくさん、いろんなお洋服を買ったときについてくるボタンたちがいました。
これ、私の母がやっていたことを真似しているのです。小さいころ、母の裁縫箱の中に、小さな紙箱が入っていて、その中にはたくさんの色とりどりのボタンがぎっしり入っていました。とってもうらやましくて、母がいない時にこっそりこんな風に並べて遊んでいたものでした。
懐かしいのと嬉しいのとでしばらく一つずつ眺めていたら、その中にこんなボタンが!
これ!
間違いなく母の裁縫箱に入っていたものです。私大好きだったもの。覚えています。
現に、裏をみるとすでに糸を通すでっぱりは風化して壊れています。一体何十年前のものなんだろう。
なぜ私の裁縫箱に入っているかと言うと、母の裁縫箱からこっそり盗ってきたからです。
私の母はとてもとても厳しかったので、たとえボタン一つであっても「これちょうだい」などと、甘えて言うことはできない家庭でした。
このボタンは、母の明るい色のワンピースについていたボタンです。
その服を着て、白いイヤリングをつけた母にあこがれていました。
「お母さん、大好き」って言いたかった。でも言わせてもらえなかった。
そして言えなくて、母の留守にこのボタンを盗んだ私がいたのでしょう。
私はそれからずっと大きくなって、今ここにいます。
言葉にできなかった想い、それが今ここまでつながって私がここにいるのだ、と思います。
今の私は大人ですから、「人には、言葉にできない想いも大切なんだよ」と、としたり顔で言うことができます。
想いをすぐに未熟なまま伝えてしまう通信手段の恐ろしさを、世に説いたりします。
だけどその一方で、もし私が幼少期から、想いを自由に伝えてもよいことと、伝えたら認められるということを学べていたら、確実に人生が変わった、とも思います。
時折顔を出すそういう弱い私を、周りの人たちが全力で支えてくれているから、今の私はなんとかやっていけています。
本当にありがたいことだと思っています。
だから、大きくなった私は、めでたくロールアップスリーブのボタンを直し、母のボタンを再び裁縫箱にしまい込み、封印しました。
次に開けるのはいつのことになるでしょう。
「お母さん、大好き」という想いを伝える代わりにボタンを盗む私のような子どもを一人でも減らせるよう、来年も周りのみんなに支えられつつ、成田は力の限り会員の皆様に寄り添っていきたいと思っています。
今年もアクシスにいらしていただき、本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
成田 奈緒子