代表挨拶
一人でも多くの子どもが本当に社会に役立つ人間に育ってほしい。これが子育て科学アクシスの願いであり、理念です。そのためにはまず、大人が本当に健康で「知恵」のある人間であることが大切だと、私は考えています。
私は、1987年に神戸大学医学部を卒業し、小児科医として臨床研修をはじめました。その後1990年より基礎研究を行うようになり、以後筋ジストロフィー症や摂食障害、自閉症や乳幼児突然死症候群など、それまでどうして発症するのかが不明であった病気の遺伝子解析を行うことで、それらの疾患の本質に迫る研究を続けました。1994年から1998年にかけ研究者として働いた米国セントルイス・ワシントン大学医学部では、そもそも疾患の根幹となる遺伝子の異常がいつ、どこでおこるのかに興味を持って、マウスの胚細胞を扱う研究を深めてきました。
帰国後、獨協医科大学・筑波大学において研究も継続しつつたくさんの患者さんとお会いする毎日を送り、さらに自分でも子育てを経験するうちに、本当に患者さんたちが良くなるためには、基礎医学・臨床医学の知識と技術だけでは足りない、ということに気づき、もっと勉強をしたいと福祉(発達障害者支援センター・児童相談所などの嘱託医)、教育(文教大学教育学部教授)の世界に飛び込み、またたくさんの社会活動(文部科学省「子どもの生活リズム向上のための調査研究」委託事業「リズム遊びで早起き元気脳」、東京都教育委員会「乳幼児期からの子供の教育支援プロジェクト」、文部科学省「早寝早起き朝ごはん」全国協議会など)にも参加してきました。
そうして、確立されたのが「子どもの脳を生活からの刺激で育てる」理論です。余りにも言い古された言葉である「寝る子は育つ」「早起きは三文の得」が実は小児科学、脳科学の観点からまさに真実であることが、たくさんの実践・実験で証明されました。生活は毎日繰り返し子どもの脳に与えられる刺激です。起床・就寝・食事、お風呂、そしてどんな言葉を交わし、どんな触れ合いを行うかで、脳は劇的に変わります。脳は、生まれてから約18年かけて生活からの刺激で育っていきますから、子どもは早くから正しい生活をすれば、本当に脳は良く育ちます。一日でも早く「良い刺激」を脳に与えられる生活に変えていきましょう。
でも、万が一「失敗してしまった」脳でも大丈夫。大きくなっても、大人になっても、脳には「可塑性(かそせい)」があるので、正しい刺激を繰り返せば、また変わることができるのです。まずは大人が、正しい知識を身につけ、正しい生活を取り戻すことが大事だと子育て科学アクシスは考えます。実際私の関わってきた本当に困っている患者さんたち(発達障害や引きこもり、不登校や抑うつ)は、医学・心理学・教育学・福祉学を融合した視点からアドバイスをして、生活を変えていただくだけで、嘘のように改善するのです。子どもも、大人もです。
私は、この理論をもっとたくさんの困っている方や指導者に学んでいただき、実践をしていただく場を提供したくて、子育て科学アクシスを開室しました。この揺るがない理論を軸=アクシスとして、多くの皆さんを家族ごと、一生涯支え、困ったときの道しるべになりたいと考えています。大人が本当に健康になって「知恵」を身につけることが、子どもにとって金品を越える宝であることを、ぜひ知っていただきたいと思います。
子育て科学アクシス代表
医学博士・小児科専門医
成田 奈緒子