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子育て科学アクシスブログ


星空人類学

皆さんこんにちは、成田です。

 
昨日、何十年ぶりかで「プラネタリウム」に行ってきました。

きっかけは、駅のポスターです。「星空人類学」というタイトルに惹かれました。

 
最近、文化人類学って面白いなあって密かに憧れているもので(笑)。基本的に文化人類学の研究者は、その文化に身を投じて住人として生活していくことで、そこにある文化を研究していくそうで。いつか学んでみたいと本気で思っているわけです。

 
ということで、星空人類学、という言葉にピピっと反応したわけです。いったいなんのこっちゃ?と思って南山大学 後藤明先生の講演会+プラネタリウム上映と解説という企画に、前情報ゼロで参加してみました。

 
・・・とっても面白かったです!

 
そもそも、南太平洋の島々の人たちは、推定5000年前に(紀元前3000年!)台湾付近に住んでた人がミクロネシア・ポリネシアと大航海の末移動して島々に定住をしていき、その後さらにタヒチから北西へと航海して新天地ハワイを見つけたそうです。

そのときの移動手段は木をくりぬいたカヌー、コンパスも海図もない時代にどうやって果てしない海に漕ぎ出せたのか?

その決め手になったのが星だったのですって。

彼らはどの季節にどの星がどの方角から昇って沈むかを、少なくとも100種類以上把握しており、それを頼りに船の進行方向を定めていたそうです。星の出ない昼間や悪天候の時には、海鳥の飛び方や風の向き(赤道付近は無風になるらしい)などで自分たちの居場所を正確に把握して、目的地へ向かいカヌーを漕いでいったのです。それらの「生きるための情報」を文字を持たない彼らは口伝で伝えていったそうです。

 
その、危険な航海を遂行する上で極めて重要な、星を把握するのに役に立ったのが「星座」というわけなので、もちろん現代の私たちのように小学校のテストに出るから覚えなくちゃ(笑)、的なものではなかったはずですよね。

なるほど、と思ったのは、私たちが学んで一律なものとして知らされている「ハクチョウ座」とか「オリオン座」とかいう星座は主にヨーロッパ文化圏のもので、当り前ですが空に線が引いてあるわけではないので、星座はそれぞれの文化圏でまったく異なるのだそうです。

南太平洋の国々の星座はいずれも大きくて(私たちの知ってる星座4個くらいひっくるめてるのが多い)、「エミュー座」とか「イルカ座」とか彼らの生活に密着した文化を表す名前がついているのだそうです。日本でも本当は、アイヌや琉球などにはまた独自の星座の読み方があるそうです。

 
なるほど、怖いことだと思いました。私たちは無意識のうちに、いつの間にか公教育という名のもとに空に線が書いてあるかのごとく皆が同じ星の並びを見るように仕立て上げられている、ということですね。しかも、それは「オリオン」とか「へびつかい」とか、私たち独自の文化に根差さない名前だったりするのに、「テストに出るから」丸覚えしている。滋賀や京都では「紫式部座」とか、米どころでは「米つき座」とかがあってもいいのに。本当は、「そこにいる人」が「そこにいる次の人」に伝えるべき情報がいつの間にか追いやられて、どこからか来た情報が全国一律に入れられているって怖いことのように思えました。

 
最後の質問コーナーで小学生が「カヌーってどうやって動かすんですか?」という素朴な疑問を呈したのにもハッとさせられました。

私は木をくりぬいた原始的な船の姿を見た時に、自分のこれまでの知識や情報だけを使用して「オールみたいなもので漕ぐのだろうな」と考えていたのですが、子どもからしてみれば、エンジン搭載しているのかもしれないし、蒸気で動くのかもしれないしいろいろな可能性が考えられるのですよね。実際、先生の答えは「基本はパドルで漕ぐが、風を見て帆を張ることもあるし、潮流を読んでそれを利用することもある」というものでした。

私たちが常識のように思わされていることを、真っ白な状態に戻ってもう一度考え直してみることはとても大切なことですね。勉強になりました。

 
成田 奈緒子