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子育て科学アクシスブログ


千里の道も一歩から 

こんにちは、成田です。

若いころはどこへ行くにも車でした。仕事柄地方から地方への転勤が多かったし、荷物がいつでも多くて重いし、と色々言い訳をしますが、結局のところ楽だというのが一番の理由でした。

でもだんだんに歩くことの楽しさを覚え、最近は格段に車の走行距離が伸びなくなりました。時間的余裕によってですが、できるだけ電車の一駅か二駅分を歩くようにしています。東京の地下鉄と違って一駅間が長く、代替のバスとかもなくて、遭難したらどうしよう・・とか時に不安にもなりますが、まあ1時間くらい歩けばどこかには着くものだ、とも思えるようになってきました。

歩く方なら共感していただけると思いますが、散歩には本当に発見があります。車で通過するだけでは一生見つからなかったであろう面白い看板や美しいお庭やちょっとしたお店がみつかります。
それだけではなく、珍しい鳥や虫や花も見つけます。サギやキジの営巣を見つけた時には感激しました。カマキリやカタツムリなど今ではめったに見られなくなった小さな生き物も、歩いているとみつけやすくなります。自然大好きな人間には、わくわくの宝庫です。

そんな楽しい散歩を繰り返しているうちに、いつのまにか筋トレになっていたようで、年々長距離・長時間歩くのも苦にならなくなってきました。そこで先日、ついに調子に乗って初めて熊野古道を歩いてみました。いにしえの人々が踏みしめ固めた石畳の道はところどころ苔むしていかにもつるんと滑りそうだし、手すりもなく不揃いな石で造られた傾斜45度!の急すぎる石段は、しばしば命の危険を感じるし、さすがになかなかの難所でした。

 
    
でも、うっそうとした森の中の古道に足を踏み入れた途端、それまでひっきりなしに聞こえていた国道を走り去るトラックの轟音も、衣服の中まで容赦なく照り付けてきた酷暑の日差しの熱も、すべてが一瞬にして「無」になったのには、驚きを通り越して畏怖を感じました。1000年以上の昔から、信仰心のみに突き動かされて、熊野詣でに一足一足踏みしめながら参った無数の人々のすべての「思い」がこのしんとした森に「気」として存在している、そんな風に感じました。まだまだたくさんの古道があるので、これから一本ずつ制覇して、私の足跡を重ねていきたい!と決意を新たにした成田です(笑)。

新幹線より早い乗り物が開発されつつあるこの世の中で、忙しい現代人が、少しでも速く、遠くに移動する便利な乗り物を追い求めるのも当たり前かもしれません。でも私たちの歴史は、人の一歩を積み重ねた上に作られているということもまた、忘れてはいけないことだと思います。たくさんの人たちの一歩一歩からつくられた歴史の遺産が自然の動植物と共存しながら今も存在している、そんな場所を知ることも大事です。

たったの一歩、されど一歩。さあ、皆さんも便利な乗り物をたまには降りて、小さな発見をしに歩いてみませんか。

 
成田 奈緒子